#2 「AIサウンドソムリエ」による“音のテイスティング”(inter-noise 2024、ナント、フランス)

種をまけば必ず芽は出る――仏教では「因果応報」と呼ばれます。もちろん私たちは良い種をまき、良い芽を育てたいと願いますが、ときに思いがけない“贈り物” が、大きな一歩を踏み出した先に現れることもあります。


2023年の学会発表直後、私のもとにも二つの”贈り物”が届きました。一つは、自動車技術会での発表を聞いたある日産のエンジニアの方からの依頼でした。「AIが自動車の音質に与える影響」について講演してほしいというものです。私は快く応じ、2023年末のシンポジウムで発表を行いました。

もう一つは、ドレスデン工科大学のセルカン・アトマー博士からの声かけでした。彼の音質評価の話は、私が以前から構想していたAI応用を思い起こしました―ワインの官能評価に用いられる教師なしモデル。それをきっかけに、私たちは掃除機音に関する共同研究を始めました。


当初、ワイン評価モデルが音質に応用できるのか、提案したものの私は、半信半疑でした。理論的には可能でも、実践には試行錯誤がつきものです。しかし結果は博士の結果と同じであり、私は“音をテイスティングする” という方法に大きな自信を持つことができました。そしてワインの国として知られるフランス、ナントで、この新しいコンセプトを発表することになったのです。


そして今、2025年。わずか1年後の現在、私は“サウンドソムリエ” の手法だけでなく、さらに二つのAIアプローチを加えた研究を進めています。これら三つを統合した枠組みをAI-SQエンジニアリング と呼び、「シン・オンシツヒョウカ・アウフヘーベン」プロジェクトを一般化した最終成果として位置づけています。


あの日、声をかけてくれたセルカン、本当にありがとう。あなたが私と共に研究したことを嬉しく思っていると聞いて、私も嬉しく思いました。次回は、このAI-SQエンジニアリングについて一緒に語り合いましょう。これもあなたの興味を持ってもらえるものと思っています。

Yokohama Institute of Acoustics
サウンドデザイン人工知能学会・国際会議機械学習音質評価