#1 シャア・アズナブル / ジェダイマスター : アクティブサウンドデザイン(ASD)のサウンドデザインレシピ(JSAE 2015 横浜 / inter-noise 2015 サンフランシスコ)

1980年代に日本で育った方なら、きっとご存じでしょう。『機動戦士ガンダム』の“赤い彗星” シャア・アズナブルです。日本以外でも、『スター・ウォーズ』に共鳴した方は多いでしょう。こうした文化的アイコンから着想を得て、私はアクティブサウンドデザイン(ASD)に独自のアプローチを見出しました。

ASD-エンジンサウンドを制御・変化させるシステム―を研究し始めて以来、自動車業界での適用事例に少し物足りなさを感じていました。その多くはエンジンの次数成分を調整するにとどまっていたからです。サウンドデザイナーの視点から見れば、重要なのは物理パラメータそのものではなく、システムがどのような音響効果(サウンドエフェクト)を生み出せるかにあります。そこで私はASDを「レシピ」として再整理しました。 表現力を広げる5つの要素は次の通りに考えました:

1. 周波数ダイナミクスの変化

2. 倍音バランスA:音楽的な調和

3. 倍音バランスB:非調和(ハーフオーダー)

4. 共鳴音の付加

5. 宇宙船的エフェクト

こうした発想をより伝わりやすくするため、シャアやジェダイマスターという象徴的キャラクターを比喩として用い表現しました。

このコンセプトを2015年、横浜での自動車技術会春季大会とサンフランシスコでのinter-noiseで発表しました。予想以上に注目を集め、日本だけでなく韓国でも、現代自動車のサウンドデザイン研究チームから大きな関心をいただきました。

振り返れば、2002~2024年の発表の中で最も印象深い出来事であり、私のキャリアにおける重要な転機となりました。

聴講にご参加くださった皆さま、そして支援を下さったGenesis社(現Ansys Sound)のチームに心から感謝しています。

### 現在の研究:ASDのための「楽譜」

その後もサウンドデザインの探究を楽しみつつ、現在は「ASDのための楽譜」というコンセプトに注力しています。

下図のように、ドライビング体験を音楽的要素に対応づけるというものです。

***Part 1: 期待 ― 発進・加速開始共鳴音の付加

***Part 2: 展開 ― 加速・倍音バランスと周波数ダイナミクスの変化

***Part 3: 転換 ― シフトチェンジ・ギアチェンジ音

この「楽譜」は、運転体験を物語のように構造化し、それぞれの走行段階を独自の音楽的ジェスチャーに結びつけます。

技術設計にとどまらず、人々がクルマの音に感情的につながるきっかけとなることを目指しています。

### 結びに

私にとってサウンドデザインは、単なる工学ではなく、音を通じたストーリーテリングです。例えばアニメの英雄や映画のスーパーヒーローからインスピレーションを得たりしながら、ASDや様々なツールで想像力を広げる強力な媒体と位置づけています。

「サウンドデザインのレシピ」や「楽譜」といった概念を通して、これからも新しい視点を共有し、音づくりの可能性を広げていきたいと考えています。

Yokohama Institute of Acoustics
サウンドデザイン学会・国際会議音のタイプ化音質評価